10、腎不全発覚(2)~まりもは犬の先天性の腎臓形成不全だった~
※今回の記事は前回の記事の続きです。
家に帰ると、夫にマリモの腎不全と避妊手術の中止についてLINEを送った。本来ならば寒くなる前にお散歩に連れて行かなければならない時間だけれど、とてもそんな気にはなれない。マリモも病院に一日預けれれて、色々な検査を受けたせいか疲れているようだった。
私の膝の上で安心して小さないびきをかいて眠るマリモを見ていると、涙があふれてきた。病院でも散々泣いたのに涙が止まらない。むしろ家では人目が無い分、歯止めが効かなくなって声をあげて泣いた。
マリモを膝に抱えてその小さな暖かな体を撫る。この子が不治の病であるなど到底受け入れられない。これからたくさん一緒に暮らして、あちこち出かけて、楽しいことがたくさんたくさん待っているはずなのに。こんな残酷な話があるだろうか。私はマリモを抱えたまま顔をクチャクチャにして泣いた。かなり長時間泣いた。
夜になって夫の食事の支度に掛かっても、涙が止まることは無かった。私自身はとても食事をする気分ではない。でも一日仕事をして帰ってくる夫の食事の支度はしなければならない、マリモを膝から降ろして台所に立った。
顔が痛くなるほど泣いた日
思いっきり顔をクチャクチャにして泣いたからだろうか、顔面全体が痛く重くなった。涙も鼻水も止まらない。夫の夕食の支度が終わると、マリモに夕ご飯を食べさせた。マリモは相変わらずあまり食事をしない。いつもならイライラすることろだけれど、それが腎不全による吐気の為だと知った今は、今まで食事を強要してきたことに対して申し訳ない思いがこみ上げてきた。
人間でも食欲のないときに食事を強要されるのは苦痛以外の何物でもない。しかし今日はドッグフードに混ぜて炭の毒素吸着剤を与えないといけない。ドッグフードの上に大好きなチーズと吸着剤を振りかけて、何とか吸着剤が混ざっている部分は完食させた。今日から毎日朝と晩に一時間置いて漢方薬も飲ませないとならない。
念のため1時間半を置いて漢方薬を飲ませた。漢方薬は錠剤だが粒が意外と大きく臭いもあるので、マリモは飲むのを嫌がった。しかし嫌がるからと言って諦めることはできない。私はバナナを5ミリ程度にスライスして4等分し、漢方薬の錠剤も砕いてバナナと混ぜた。幸いこの方法でマリモは漢方薬を飲んでくれた。しかし私の手はベタベタになり、薬もかなり手についてしまうので、近いうちに別の方法を考えないといけない。
暫くして夫が帰ってきた。私がよほど酷い顔をしていたのだろう、夫は私を見ると、妙にハイテンションに「ただいま!」と言って「マリモち~ん!」とマリモに駆け寄った。マリモは夫の帰宅に喜びを爆発させ、尻尾をブンブン振って夫の鼻先を舐めている。
夫はマリモを抱き上げて、「マリモちゃん、あんまり長く生きられないのかもしれないねぇ。でも大丈夫だからね。」と、まるで私に言い聞かせるようにマリモに話しかけた。
結局私はその日、床に就くまでずっと泣いていた。私があまりに異様だったのだろう、マリモが途中で膝に乗ってきて腿の上に立ち上がり「ママ泣かないで。マリモが傍にいるからね。」と言うように私の顔を舐めた。
翌日から一週間、私はマリモを連れて毎日点滴に通った。通院が始まるとマリモは病院を怖がるようになり、待ち時間はいつも私にしがみついて震えていた。可哀想で涙が出そうになるのをこらえながら診察を待ち、15分程度の皮下補液が終わると、近所の公園を少し散歩して帰るのがマリモと私の新しい日課になっていった。
そして1週間後、再度血液検査の結果は残酷なものだった。
<血液検査> 2019年2月5日
BUN 91
CREA 3.0
腎臓の数値は全く改善されておらず、僅か生後9か月のマリモの腎臓の余力は既に大きくないことが確認されただけだった。
私は再び顔が痛くなるほど泣いた。まりもは私が悲嘆に暮れる姿を見て、ママが悲しんでいると感じたのだろうか、私の横に寄り添うように座り、時折膝に乗って私の顔を懸命に舐めた。
※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。