まりも日和

先天性腎臓形成不全による重度の腎不全のため、2歳と18日で虹の橋へ旅立った愛犬「まりも」について綴った「まりも物語」(腎不全と闘った642日間の記録)と、2020年8月に我が家にやってきたおてんば娘「ぴりか」の成長記録「ぴりか日記」、ハンドメイドについて書いた「Atelier Marimo」、その他夫婦二人生活の日々の出来事や思うことを綴ったブログです。

まりも物語:11、ブリーダーの反応 〜彼女は最初から知っていた〜

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重度の腎不全を患いながらも元気いっぱいだったマリモ。

11、ブリーダーの反応  〜彼女は最初から知っていた〜

 

マリモに先天性の腎臓形成不全があると判明した時、獣医さんは「隔世遺伝かもしれないけれど、遺伝の可能性はありますね。」と言っていた。もし遺伝性だとしたら、今後マリモの親犬で繁殖をしないようにブリーダーに伝えなければと思い、マリモの治療が始まって一週間程度たった頃、私はブリーダーに電話を入れた。

私がマリモの腎不全について告げると、彼女は「あぁ~、そうだったんですか~。申し訳ありませんねぇ・・・」と溜息をつくように言った。

彼女は初めから知っていた

 「そうだったんですか~」ですって???!

彼女は驚いて息を飲むことも、口調が乱れることも、慌てることも無かった。全く他人事のように「それは大変なことになりましたねぇ・・・」と続ける。大変なことになったのではない。元々大変な重病を抱えていたことがやっと発覚したのだ。

彼女の落ち着いた返答と全く驚かない態度で私はやっと悟った。彼女は知っていたのだ。マリモに何か重大な病が隠れていることを。予見していたのだ。やがてそれが露見した時には私からクレームが入るであろうことを。

電話を掛けた当初、私は別にブリーダーにクレームを入れたかったわけでは無かった。遺伝の可能性があるのならば、二度と悲劇が繰り返されないよう、繁殖犬を変えるように忠告したかっただけだった。しかし彼女のこの返答を聞いて、私は怒りが込み上げてきた。

私は「あなたが繁殖して売った犬です。それが先天性の重大な疾患であと僅かしか生きられないんですよ。大変なことになったではないでしょう。元々大変な問題のある犬を貴方が売ったんですよ。」と強い口調で言った。すると「でも、あなた方があの子を気に入りあの子がいいって言ったからお譲りしたんですよ。あなた方が希望したんです。」と全く反省する様子が無い。当然、謝罪の言葉も一切ない。

私は譲渡前の健康診断についても詰問した。マリモは恐らくはブリーダーの手元に居たときからあまり食欲旺盛では無く、水も大量に飲んでいたはずだ。しかもあのお漏らし癖は絶対にあったはず。まるで犬の知識がない私達はともかく、プロであるブリーダーが異変に気づいていなかったとは考えにくい。その点に関してはトレーナーさんも医師も指摘していた。それならば譲渡前になぜしっかり血液検査を受けさせなかったのかと。

彼女の返答は「血液検査までは譲渡前の検査の必須項目ではないから、貴方はこちらの過失を問うことは出来ない」というものだった。この時の口調で私は彼女がマリモの異変に譲渡前に気づいていたと確信した。彼女の態度は不注意で図らずも先天性疾患のある仔犬を譲渡してしまったブリーダーのものではない。確信犯の周到に準備された返答で、そこに誠実さは微塵もなかった。

どこまでも不誠実だったブリーダー 

私はこみ上げる怒りをこらえながら、「貴方はプロなのにマリモの異常に気付かなかったのですか?私が何度もマリモが食事をしないことと水ばかり飲むことを相談しているのに、貴方はいつも私が神経質すぎると言って取り合おうとしませんでしたよね。」と言うと、「直接見ているわけでもないのに電話だけでは異常を見抜けるわけがない。あなたこそ今まで何も気づかなかったんですか?飼い主なら変だと思ったら検査受けさせればよかったじゃないですか。」と売り言葉に買い言葉の応酬が続いた。

彼女の不誠実さに呆れた私は「あなた知っていたんですよね。だからさっき私がマリモの腎不全を知らせても全く驚かなかった。私からクレームが入っても責任を逃れられる言い訳もしっかり考えてあった。」と彼女に詰め寄った。

さすがに彼女は黙ってしまった。当時彼女はインターネットのブリーダー直販サイトを利用して仔犬を販売しており、その評判はとても良かった。

私は止めを刺すつもりで「あなたに責任が無いとしても、私が譲り受けたマリモが先天性腎臓形成不全で僅かしか生きられないこと、そしてそれは遺伝性である可能性があることはネットのレビュー欄に書き込ませていただきますね。あくまで事実の報告として。」と言った。

彼女はしばらく黙ったままだったが、「こちらに非はないので取り替はできませんよ。」と言ってきた。

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マリモは私達の宝物、すっかり家族の一員になっていた。

犬は物ではない、交換など有りえない

いい加減、堪忍袋の緒が切れてきた。ふざけるのも大概にして欲しい。私はどんな重篤な疾病を抱えていようとも、マリモを手放す気などさらさら無かった。一緒に暮らし始めて6ヶ月、マリモは既に我が家の一員になっていたし、私と夫にすっかり懐いてしまっているのに取り換えるなど有りえない。ただでさえ過酷な運命を背負って生まれた子に、そんな仕打ちができるはずがない。

私は「そんなことを言いたいのではありません。重篤な先天性の疾患のある子を売ったんですよ、あなたは。そのことの重大性を受け止めてほしいんですよ。今使っている繁殖犬の使用をやめてほしいんですよ。」とかなり強い口調で言った。しかし彼女は「遺伝だと証明できるわけじゃないですよね。証拠もないのに何故そこまで言えるんですか。」と食い下がった。

もう、彼女に何を話しても無駄だろう。交換する気など微塵もない。私はとても話にならないと電話を切った。初めて会った時には犬好きの優しそうな女性に見えた。しかしマリモの購入後は何を聞いても私が神経質すぎると言って取り合わず、私は違和感を覚えていた。そして今日のこの対応である。

彼女は間違いなく気付いていた。だから私が何度相談しても念のため検査を受けさせることは勧めず、全て私が神経質すぎるということにしようとしたのだ。今にして思えば、譲渡の際にも生まれてから3か月も世話をした犬なのに彼女はマリモとの別れを全く惜しむ様子が無く、そそくさと帰って行った。その時はあんまり見ていると別れ難くなるからだと思っていたけれど、やっとあの態度の意味が分かった。

夫が家に帰ってから事の顛末を説明すると、普段は温厚であまり激高することのない人が、「物じゃあるまいし、何が交換はできないだ!」と珍しく声を荒げた。私達の考えは一つだった。何があっても最後までマリモを守りぬく。万に一つも回復の見込みのない病だ。どれほど高額な医療を施したとしても、マリモは遠くない将来いなくなってしまう。これからは3日開けずに点滴通いの日々が始まるから行動もかなり制限されるだろう。

でも、このクリクリお眼目のおてんば娘は、私達にとっては既に何物にも代えがたい宝物になっていた。幸いこれまではいくらか痩せすぎとはいえ順調に成長している。良い獣医さんやトレーナーさんにも巡り会えた。

腎不全を患った犬の平均寿命は2年程度だという。でもマリモは老犬ではなく腎臓形成不全にもかかわらず、順応しながら成長してきたのだ。もしかしたら意外と長生きするかもしれない。私はマリモを抱き上げ、「大丈夫だよ。ママ達がず~と一緒にいるからね。頑張ろうね。」と話しかけた。

私達には側にいてできる限りの医療を受けさせることしかできない。この子が背負う残酷な運命を変えてあげることはできない。でも最後まで諦めはしない。たとえ短くてもその生涯が少しでも楽しく充実したものになるよう、できる限りの努力をしようと私は決意を固めた。

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

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