27、腎不全に負けずに成長した子、その生命力 ~犬の先天性腎不全~
3月に入り余命宣告を受けた直後、10日間以上も絶食が続いていたマリモは、二度目のお雛祭りの日に突然ボーロを食べ始め、夜にはボーロと炊き立てのご飯を食べ始めた。
トイレの時と水を飲む時以外は全く立ち上がらなかったのに、よろよろとリビング内を歩き、ソファーのお気に入りの場所に上ろうとして、自分では上がれずに私にのせてくれとせがむ。
乗せてあげるといつものひじ掛けに顎を乗せて、ご機嫌そうな表情を浮かべた。そして電気釜からご飯が炊けたことを知らせるアラームが鳴ると、「ご飯ちょうだい」と言うように、ソファーから自力で飛び降りて電気釜の下までやってきた。
小皿に炊けたばかりのご飯を取り、少し冷ましてからマリモの口元にもっていくと、マリモはほんの少しずつだったけれど、美味しそうにご飯を食べた。やっと連日の点滴の効果が表れてきたのだろうか。そしてこの日を境にマリモの食欲は回復に向かい、目にも力が戻ってきた。
食べてくれるものを最優先に与える
食欲が回復したと言っても以前のように療法食を食べることは無く、食べてくれるのは専らおやつばかりだった。しかも以前は大好きだった犬用カステラや犬用のパンは一切食べず、バナナやサツマイモもあまり食べない。
代わりによく食べたのはりんごと人間用のパン、特にクロワッサンやマドレーヌ、ポンテケージョは好んで食べた。また、私が好んで食べていたためかスコーンも時々食べたがった。
ヨーグルトとチーズは相変わらず大好きでよく食べた。乳製品はリンが多いとはわかっていたけれど医師は食べてくれるなら食べさせた方がよいと言っていたので、クレメジン投薬の際にはいつもヨーグルトを使い、チーズも少量を食べさせ続けた。
重症のマリモに与える食べ物にはいつも「これを与えて大丈夫か?」という不安が付きまとった。しかし、常に医師は「何も食べないのが一番悪い。何を食べたとしても食べないよりはいいので、食べてくれるものを最優先してください。」と言っていた。
絶食から回復したマリモがよく食べたのが乳酸菌スティックだった。
<参考>
ペティオ (Petio) 犬用おやつ 乳酸菌のちから スティックタイプ チキン 100g
これは主人がドラッグストアで見つけてきたものだったけれど、マリモはこのスティックを大変気に入り、その後再び絶食になる日まで、主食のように食べ続けた。日によってはこのスティックしか食べない日もあり、そんな時は白っぽいウンチが出ることもあった。そして食べ始めて3日後ぐらいからは、ほんの少しだけ公園を歩くようになった。
進んでいく偏食
マリモはパンも好んで食べていたけれど、スーパーで売っているようなパンではなく、ベーカリーの焼き立てパンだけを好んだ。やはり嗅覚が鋭い犬にはベーカリーのパンとスーパーのパンは別物なのだろう。
しかも食べてくれるのは買ってきた日の翌日ぐらいまでで、翌日に食べさせる時には電子レンジで10秒程度加熱し、香りを立たせる必要があった。私は近所のベーカリーに一日おきに通い、小さなサイズのクロワッサン、マドレーヌ、ポンテケージョを切らさないようにし、マリモが食べなかった分は自分の食事用にしていた。
他にもジャガイモやサツマイモをピューレ状にしてみたり、ブロッコリと豆乳でポタージュスープを作ってみたりしてみたが、マリモはあまり食べてはくれなかった。腎不全用の液体療法食もシリンジで口に入れてみたけれど、よほど美味しくないのか入れる傍から吐き出してしまった。
食べてくれることが奇跡
この偏食ぶりを医師に相談すると、偏食云々の前に今の状態で食事ができていることの方が不思議なのだという。先日の血液検査の結果から見れば絶食になっていて当然で、どんな食べ物であれ食事をしたり、ほんの少しとはいえ公園を歩いたりしていることは驚くべきことだそうだ。
医師は「これが腎不全に負けずに成犬まで成長した子の底力なんでしょうね。」と言い、「尿毒症に体を順応させながら生きてきたからこんな状況でも食事も歩くこともできるんでしょう。」と、感慨深い眼差しでマリモを見ていた。
※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしてあります。