まりも日和

先天性腎臓形成不全による重度の腎不全のため、僅か2歳と18日で虹の橋へ旅立った愛犬「まりも」との日々 ~腎不全と闘った642日間の記録~

まりも物語:5、痩せすぎな仔犬 〜元気いっぱいの日々にも現れていた腎不全の影響〜

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我が家にも慣れ、次第に表情豊かになっていったマリモ

5、痩せすぎな仔犬

マリモは成長期だというのに食が細いままで、食事には私は毎日頭を抱えていた。ドッグフードの袋に書いてある目安量の半分食べさせるだけで30分はかかり、完食することは無い。犬用のふりかけをかけてみたるなど工夫しても、半分以上を食べさせることがどうしてもできずにいた。

しかし、その一方で我が家に慣れてきたマリモは、毎日を元気いっぱいに過ごし、食事の問題以外は健康そのものだった。まだ外には出せないものの、家の中での活動範囲は驚くほどの速さで広がっていき、最初はケージの周りを歩く程度だったのが、日々家の中の探検に励み、気が付けば寝室の方まで来ている。

目を離すとゴミ箱をひっくり返すので、リビングのゴミ箱をケージの上にのせてしまうと、わざわざ他の部屋まで出かけて行ってはゴミ箱をひっくり返し、中のゴミを咥えて得意そうな顔で私に見せびらかした。

洗濯物も大好きで、夫がクローゼットの扉を開けたまま出かけてしまった時など、器用に引き出しを開けて、中から夫のパンツや靴下を取り出しては、得意満面でリビングを走り回る。

走る小さな黒い毛玉のようなマリモは、いたずらっ子で油断も隙もあったものではなかったけれど、見ているだけで幸せな気分になれる可愛らしさに、私も夫もすっかり骨抜きにされてしまっていた。マリモが小さな体と短い脚で精力的に活動範囲を広げていく姿を、夫は「進撃のマリモ」と呼んで面白がって見ていた。

マリモがやってきて一週間を過ぎたころ、近所の動物病院にワクチンを打ちに行った。我が家から3分ほどの距離にある動物病院の医師は、まだ30代の優しそうな人で、注射の前にマリモの体重を測り、全体を触診して細かくチェックしてくれた。当時のマリモの体重は1.8kg、3か月の赤ちゃんにしては結構重い。しかし医師はマリモの骨格の大きさから考えれば、ちょっと痩せすぎだと言った。

マリモの食の細さが心配だったとはいえ、当時のマリモのお腹は「ポンポコリン腹」という表現がぴったりなお腹だったこともあり、私は痩せすぎとまでは思っていなかった。しかし医師に指摘されると、やはりあの食事量ではまともに成長してくれないのではと一気に不安になる。思い切ってマリモの食の細さについて医師に相談すると、医師はドッグフードがあっていないにかもしれないと言って、数種類のドッグフードのサンプルをくれた。

そしてワクチン接種が無事に終わると家に戻り、マリモに早速サンプルにもらったフードをあげてみたが、やはりあまり関心を示さない。一応関心を示して臭いをかぎにても、鼻を近づけてクンクンやるだけで、決して口にしようとしない。やはりマリモが口にするのは、おやつのサツマイモやカボチャなど、炭水化物ばかりで、成長に不可欠なたんぱく質を含む食べ物にあまり興味を示さなかった。

その後もマリモがちっともドッグフードに興味を示さない日々は続き、毎日繰り返される朝昼晩の三回の食事は、徐々に私のストレスとなっていった。私は食事の問題を解決しないとマリモは無事に成犬まで育たないのではないかと、日に日に不安を募らせていた。

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ふっくらお腹のマリモ。しかし病院では骨格の割に痩せすぎだと指摘を受けていた。

お漏らしが治らない

そして、この頃私にはもう一つ気になっていることがあった。マリモは物覚えがよく、ほんの一週間程度のトレーニングでトイレは覚えてくれた。しかし、眠っている間にほぼ必ずオシッコを漏らしてしまうのだ。朝ベッドを見ると、必ず半分程度が濡れている。毎朝マリモの下半身を洗い、ベッドをもう一つ買い足して毎日洗濯していたけれど、お昼寝でもお漏らしするので到底追いつかない。仕方なく暫くベッドは使わずに、吸水性に優れたバスタオルを何枚か折って重ねてベッド代わりにしていた。

このお漏らしも、今にして思えば腎不全の兆候の一つだったのだろう。腎不全で脱水を起こしやすいマリモは、とにかくお水を飲む量が多かった。

腎不全の兆候の一つに多飲多尿がある。マリモは完全に多飲だったので、薄い尿が大量に出ていた。尿が大量に溜まるために、無意識のうちに漏らしてしまっていたのかもしれない。私は実家で母が飼っていた犬に比べてマリモの尿が臭わないこと、量が多いことを少し不思議に思っていたけれど、実家の犬はもう13歳の老犬だったから齢が違いすぎたし、マリモはまだ赤ちゃんだからあまり尿が臭わないのかと思い、さほど気にもしていなかった。

腎不全は最初の頃は何も症状が無いが、第1期(初期)から第4期(末期)までのステージのうち、第3期頃になると多飲多尿、食欲不振などの症状が現れる。マリモは先天性の腎臓形成不全だったので、生後数か月で既に第3期に見られる症状が出ていた。

食欲不振は腎不全以外の病気や、ストレスでも見られる兆候だ。しかし多飲多尿については明らかに腎臓の異常からくるものなので、もし愛犬のお水を飲む量が体格に対して多すぎると感じるほどに増えたり、おしっこが妙に薄く、あまり臭わなくなったりしてきたら、迷わず血液検査を受けることをお勧めしたい。 

 

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

まりも物語:4、最初の違和感 〜現れていた腎不全の兆候〜

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リビングを所狭しと遊びまわるマリモ

4、最初の違和感

マリモと暮らし始めた当初、毎日元気いっぱいに動き回るマリモを見て、私はマリモとの楽しい暮らしばかりを想像していた。最初は大変だろうけれど、ある程度大きくなれば色々な所にも連れていかれるし、長時間でなければお留守番もできるようになるだろう。食事が朝晩の2回になって、トイレの躾が終わればだいぶ楽になる。マリモは1週間でトイレを覚え、トイレの躾は全く問題なく終わった。しかし食事に関しては最初から問題だらけだった。

ブリーダーさんに指定された幼犬用のドッグフードを指示通りにあげているのに全く食べようとしない。お腹がすいていないのかと少し時間をずらしてみても、やはり全く食べる気配が無い。それでも育ち盛りの子の食事を抜くわけにはいかないと思い、毎回30分以上もかけて懸命に食べさせた。

困り果ててブリーダーさんに電話してみると、環境が変わって緊張しているせいだから気にする必要はないと言う。しかし、育ち盛りの赤ちゃんが全く食事を取ろうとしないなんてあるのだろうかと私は不安になった。しかも、マリモはちっとも食事をしようとしないのに、お水だけは勢いよく飲んだ。夫もマリモの飲水量とその勢いには驚いたようで、「すごい飲みっぷりだなぁ」と呆れるように見ていた。

今にして思えば、この飲水量の多さは、マリモが私達に見せた腎不全の最初の症状だった。マリモは私達夫婦が初めて迎えたペットだった為、その頃の私達には仔犬が飲む水の量について全く知識が無く、この飲水量の異常さに気づいていなかった。

今ならば何かの内臓疾患を疑って直ぐにでも病院で血液検査を受けさせるだろう。でもこの頃の私達は、仔犬は随分お水を飲むんだなと思う程度で、あまり気にしていなかった。

とはいえ、そんな私達でも強い違和感を持つほどに、マリモはドッグフードに興味を示さなかった。それでも病院で検査して貰おうと思わなかったのは、引き渡し時にブリーダーから渡された診断書には健康状態は「良好」となっていたことと、マリモは食事をなかなか食べようとしないこと以外はとても順調に育っており、ビックリするほど元気いっぱいな仔犬だったからだ。

家の中を元気に走り回るマリモを見ていると、食事の問題は健康の問題と言うより躾の問題なのだと思い、食事の時間は大変だけれども、しっかり躾て行けば治るものと楽観視していた。しかし、後にそれは大きな誤りだったと思い知らされた。

マリモはご飯に全く興味を示さないのとは対照的に、おやつ用に茹でたサツマイモやかぼちゃ、バナナやリンゴは喜んで食べていた。だから私はマリモがご飯を食べないのは唯の好き嫌いと思い、ドッグフードを変えてみたり、食べないならそのまま放置したりして様子をみてみた。

しかしフードを変えてみても、マリモはあまり食事に関心を示さず、色々とトッピングをするなど工夫をしてみても、規定量の半分を食べさせるのに毎回30分以上はかかる状態が続いていた。

 

腎不全の最初の兆候

腎不全の症状を知った今は、多飲多尿と食欲不振が見られたら腎不全を真っ先に疑い、血液検査を受けさせるだろう。しかしこの頃はまだマリモは健康な仔犬だと信じて疑わなかった。だからブリーダーに「神経質すぎる。もっと大らかに構えていないと犬が神経質な子に育つ。」と言われれば、次第に私が気にしすぎなのかと思うようになっていった。

そして仔犬の成長過程にはこのようなこともあるのかもしれない、きっと幼いうちだけだと、自分の違和感と不安に無理に蓋をしてしまったことが、結果としてマリモの腎臓形成不全の発見を遅らせることになった。

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ケージの中でも「ヘソ天

しかし、結果的に私の違和感は当たっていた。決して神経質すぎたのではない。やはり少しでも違和感を覚えることがあったら、誰に何と言われようと、自分の安心の為にも絶対に納得いくまで検査をするべきだった。犬の医療は健康保険が無いから一度の検査で概ね一万円以上はかかる。でも新しく犬をお迎えしたら、最低でも血液検査だけはしておくことを私は強くお勧めしたい。

腎不全が判明した後にブリーダーに電話をした際、譲渡時の健康診断について尋ねた。彼女の返答は、譲渡の際の健康診断では血液検査は必須ではないというものだった。彼女の理屈では、必須ではない以上、先天性の腎不全のように血液検査をしないと分からない内臓疾患のある仔犬を譲渡してしまったとしても、ブリーダーには何ら責任ではないと言う。

マリモの飲水量や食欲の異常に気付いていたのではと抗議する私に全く取り合おうとせず、むしろそれまで異変を放置した私に責任があるかのような言いようだった。そんな彼女に私は今でも怒りを覚える。

とはいえ、誰の責任であるかはともかく、多くの先天性の疾病は早期発見で進行を遅らせることができる。そして早期発見はブリーダーにしろ、飼い主にしろ、その時その犬の命を預かっている人間に掛かっている。

腎不全に関しては、症状が出てくるのは第1~4期まであるうちの第3期が近づいている頃なので、早期発見には日ごろから定期的に健康診断を受けさせることが必須だろう。万一食欲不振や多飲の傾向が見られるようになった場合は、迷わず動物医療機関を受診してほしい。

 

犬の飲水量

因みに犬の飲水量の目安は体重×50cc程度だそうだ。インターネットで調べていると、体重×100ccと書いてあるものもあるけれど、マリモが掛かっていた先生は体重×100ccは異常だと言っていたし、私もマリモが3.5kgぐらいの時に一日に300cc近く飲むのを見て、明らかに異常だと感じた。

夏は犬でも飲水量が多めになったとしても、やはり体重×50ccを超えた場合には念の為検査受けることをお勧めする。そして最近お水を飲む量が増えた気がすると思ったら、一度しっかり計測してみてほしい。

 

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

まりも物語:3、マリモとの日々の始まり

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我が家2日目、すっかり慣れてきたマリモ

3、マリモとの日々の始まり

 我が家に来た初日こそ、マリモはケージから出ずに大人しくしていたが、二日目以降はすっかり慣れてきて、用意しておいた玩具で夫と遊び、早速やんちゃ振りを発揮していた。マリモは、ヨークシャーテリアにしては脚が短く太く、胴体が長い子だった。私の実家でもヨークシャーテリアを飼っているけれど、その子と比べても明らかに短いけれど太くしっかりした脚で、まだ赤ちゃんなのに力も強かった。

我が家になれて、私達にもすっかり懐いたマリモは、活動範囲はリビングのみではあるものの、何にでも興味津々で臭いをかいだり、噛み付いたりしていた。ヨークシャーテリアの赤ちゃん特有の真っ黒な毛に覆われた小さなマリモが太く短い脚で歩く姿は、まるで動く毛玉の様で可愛らしく、私は一日に何回も動画を撮ろうと試みた。でもマリモはなかなか思うように顔をこちらには向けてくれず、予想外の動きをするので、残念ながらどれもあまりうまく撮れていない。しかし、そんな不慣れな映像でさえ今では貴重な宝物になっている。

 

ヘソ天」で眠るチビオヤジ

また、マリモは不思議なことにしょっちゅう仰向けの姿勢、いわゆる「ヘソ天」の格好で眠る子だった。我が家に来て3日目、マリモは夫の座布団を占領してヘソ天で眠っていた。しかも赤ちゃんのくせに軽く鼾までかいている。さらにマリモのお腹は「ポンポコリン」という言葉がぴったりのふっくらしたお腹だったので、その寝姿はまるで小さな可愛いオッサンのようで、私は何枚も写真を撮った。

マリモは赤ちゃんの時だけでなく、成犬になってからも、とにかくヘソ天の姿勢で眠っていることが多かった。仰向けで大股開きの姿勢で気持ちよさそうに鼾をかいて眠る姿を見るたびに、夫と二人、マリモが人間の女の子でなくて良かったね、と笑いあっていた。

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得意の「ヘソ天」でスヤスヤ眠るマリモ

我が家にやってきて1週間もする頃には、マリモは「我が家に慣れる」を通り超えてすっかり太々しくなり、言わば「小さな巨人」となっていた。私達がソファーに座るとトコトコ歩いてきて、抱っこしろとせがむ。そして抱き上げて膝に乗せると、夫と私の膝の上を梯子して気に入った方の膝の上で丸くなる。

そして大人しくベッドにいるときは大股開きのヘソ天で鼾をかき、小さなオッサンのような姿で眠っている。当時は僅か2kg足らずだったこの小さな黒毛オヤジは、あっと言う間に我が家の中心的存在となり、私達の生活は一気にマリモ中心のものに変化した。

小さな黒毛オヤジは、毎日元気いっぱいで、とにかくリビングを散らかして歩いた。朝、掃除機をかけるために玩具を全て箱にしまうと、片づける傍から咥えて箱から出し、気が付くリビングは玩具だらけ。そして水を入れたお皿はひっくり返して水をぶちまけ、ドッグフードの入ったお皿もひっくり返し、私が怒ると得意そうな顔で逃げ回る。

全くなんて奴だと思うこともあったけれど、悪さをして得意そうな顔で尻尾をブンブン振る姿がまた物凄く可愛い。すっかりこのお転婆なチビ黒オヤジにメロメロになっていた私は、どうしても本気で怒ることができずにいた。マリモもその辺はお見通したったのか、少しぐらい怒った顔を作っても全く意に介さず、やりたい放題だった。

そして、この黒毛チビオヤジは、とんでもなく甘え上手な一面もあり、眠くなったり抱っこしたりしてほしいときには「クゥ~ン・・・」と可愛い声を出しながら尻尾フリフリやってくる。こうして暴れたり甘えたり、日増しにやんちゃ振りを発揮して表情が豊かになっていくマリモの成長は、私と夫にとっては何物にも代えがたい楽しみになり、我が家は笑いの絶えない楽しい日々が続いた。

しかし、楽しいばかりの日々は長くは続かなかった。

 

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

まりも物語:2、まりもとの出会い

2018年8月11日、初対面のマリモ

 ※まりもの名前は本来はひらがなですが、文中では見やすさを勘案してカ タカナ表記にしてあります。

 

、マリモとの出会い

 

マリモは2018年5月2日、西東京市のブリーダーさんの元で生まれた。私がインターネットのブリーダーサイトでマリモを見つけたのは、8月の初旬、マリモが生後3か月になったころだった。サイトに載っていた写真のマリモは、目がクリクリの可愛い女の子で、ブリーダーさんも口コミを見る限り大変評判が良かった。予てより飼うのなら女の子がいいと思っていた私は早速夫に相談し、ブリーダーさんに連絡を取った。

そして8月11日、私とマリモは初めて対面した。ブリーダーさんとはJR箱根ヶ崎駅で待ち合わせ、マリモと初のご対面となった。ブリーダーさんの車の中で対面した小さなマリモは、初対面の私に抱っこされても抵抗することもなく吠えることもなく、落ち着て私の両腕にすっぽり収まり、クリクリの目で私を見た。そして夫の膝の上に移されても特に慌てるでもなく落ち着いた様子で主人の腕に顎を乗せて、すっかり寛いでいる様子だった。

当時のマリモの体重は約1.5kg。小さな体にクリクリの瞳が印象的な可愛い女の子が、初対面だというのに、まるで既に我が家の犬のような顔で私と主人を見ている姿は、この子はもう我が家の子になると決めているかのように見える。その愛らしい姿にすっかり一目惚れした私と夫は、その場でマリモを我が家に迎え入れることを決めたのだった。

 とはいえ、とりあえず実物に会ってみようという程度の気持ちで会いに行った私達は、まだ仔犬を迎え入れる用意ができていなかった。その為その日は連れて帰らずに一週間後に改めてお迎えに行くことにし、一週間の間に犬用ケージやベッド、トイレなど必要なものを揃えて、8月17日の午前中に夫と二人でマリモを迎えに行った。

 

2018年8月17日、マリモが我が家へ

箱根ヶ崎駅で再びブリーダーさんと待ち合わせ、マリモを譲り受けた。私はキョトンとした顔で私に抱っこされているマリモに「これからは私達が家族だからね。いっぱい遊ぼうね。」と語りかけた。ブリーダーさんはマリモを私に手渡すとそそくさと車に乗って去っていってしまった。

彼女はちょっと驚くくらいに別れを惜しまなかった。私は少し違和感を覚えたけれど、あまり顔を見ていると別れ難くなるからかなと思い、その時はあまり深くは考えなかった。

持参したキャリーバッグにマリモを入れて電車で自宅に向かう。キャリーバッグに移された当初、マリモは特に吠えるでもなくきょとんとした顔をしていたけれど、駅の改札を過ぎた辺りで何かがおかしいと察したのか、「クゥーン・・」と心細そうな声を上げた。

そしていよいよ電車に乗ろうとするとき、マリモはやっと事の重大さに気づいたようで「クゥ~ン、クゥ~ン!」とちょっと慌てたように吠え、バッグから出ようとした。私はマリモを落ち着かせようと、バッグの中に手を入れて体を撫で、「大丈夫だからね~。いい子にしててね。」と話しかけた。マリモは、「これが大人しくしていられるか!!」と言いたげにバッグの中で立ち上がったものの、あっという間に観念したらしく、ふて寝するような姿勢になった。

我が家までの道のりは、電車で約1時間かかる。暑さ対策は念入りに行ったし電車は冷房が効いているのであまり問題は無かったけれど、電車初体験のマリモが途中で騒ぎはしないかと内心ヒヤヒヤしていた。しかし、マリモは最初こそか細く吠えたものの、道中は殆ど声も立てず、バッグの中に座っていた。

お昼頃に我が家に着いて、マリモをバッグから出した。いきなり知らないところに連れてこられてしまったマリモは全く吠えず、ベッドに乗せてあげると、もうそこを動こうとはせず、夫があやすとベッドの中で尻尾をブンブン振るものの、ベッドからは絶対に出てこない。ブリーダーさん指定の幼犬用フードを与えてみても、全く口をつけず、お水だけを勢いよく飲んでいた。f:id:Marimotan:20190716183941j:plain

我が家初日、不安そうなマリモ

二日目の朝

二日目の朝、私は6時前に起きてマリモの様子を見に行った。カーテン代わりにケージにかけた風呂敷をめくると、マリモは奥のほうからトコトコ歩いてきて、出してというように前脚でケージの柵を蹴った。私が扉を開けてあげると、マリモは恐る恐る外に出てきて、私の足元で「クゥ~ン」と甘えるように鳴いた。私はマリモを抱き上げて「おはよう!」と話しかけ、マリモが寝ていたベッドの方を見た。

そこには、コロコロのウンチが転がっていた。「えぇ~!!」と声をあげてマリモの体をチェックする。幸い硬めのしっかりしたウンチだったので、マリモの体には何もついていなかった。取りあえずマリモの体を濡れタオルで拭き、ウンチの始末をする。マリモは私の膝に座ってクリクリの目で私を見上げていた。これからこの子との暮らしが始まるのだ。私は小さなマリモに「これからよろしくね」と話かけ、背中を撫でた。

 

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

まりも物語:1、2020年5月19日、最期の時

 

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元気だった頃。お転婆娘だった。

1、2020年5月19日、最期の時

2020年5月19日の午後7時を少し回ったころ、私は夕飯を終えてリビングに設置したペット用酸素ボックスの中を見た。マリモは苦しそうに肩で息をしつつ、何度か頭を持ち上げようとしている。息が苦しくて何とか楽な姿勢を探そうと力を振り絞っているように見えた。手を貸してあげたいけれど、下手に手を出すと余計に苦しませてしまいそうで手が出せない。

ふと、マリモの口元のあたりを見ると、黄土色に汚れていた。嘔吐したのだ。私はすぐに酸素ボックスの入り口を少し開けて顎のあたりの汚れを確認した。マリモは大量の胃液を吐いていた。マリモをあまり動かさないように気を付けながら、ボックス内に置いたベッドの上に敷いたタオルを外して新しいものに取り換え、口の周りを拭いた。マリモは苦しそうに少し顔を上げたけれど、伏せたままほぼ動かない。ただただ苦しそうな息を繰り返していた。

交換したタオルを広げてみると、かなり広範囲に黄土色の液体が染みており、尋常ではない量の胃液を嘔吐したことが分かる。動物病院は既に午後6時で閉まってしまっているけれど、先生に電話を掛けようとスマホを手に取った。嘔吐量が多すぎる。午前中に強めの吐き気止めが入った点滴を受けたばかりなのに、この嘔吐は明らかに異常だ。マリモも苦しそうにしている。

異変に気付いた夫が様子を見に来た。夫はスマホを握りしめる私に、とりあえず酸素ボックスから酸素マスクに変えて様子を見てみてはと言い、酸素ボックスの窓を開けてマスクを直接マリモの鼻と口に当て始めた。

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マリモは我が家の可愛い一人娘だった。

 

最後の時

そして何分かが過ぎた頃、肩で息をしているマリモの尻尾が動き、全身に電気が走ったように痙攣が起きた。もう様子を見てはいられない。縋る思いで動物病院に電話すると院長先生が出た。先生にマリモの様子が明らかにおかしいことを話している間も、マリモは痙攣を繰り返している。パニックになった私が半分泣きながら、とにかく直ぐに病院に連れていくと話しているその最中、夫の「駄目だ、もう・・・」という声が聞こえた。マリモは最後に大きく痙攣した後、息絶えてしまった。

マリモは最後に痙攣したままの、手足を伸ばし切った状態で動かなくなっていた。目は開いたままで口からは白い舌先がのぞいている。もう息絶えてしまったとはいえ、後脚に刺したままになっている静脈点滴用の管を抜いてもらうために、夫と二人でマリモを病院へ運んだ。

幸い病院は徒歩で3分ほどの距離にある。先生は入り口に電気をつけて待っていてくれた。そして脚の管を抜き、口の中を掃除したり詰め物をしたり、冷たくなっていくマリモの体をきれいに整えてくれた。

病院で待つ間、私は声をあげて泣いた。我が家の可愛い愛犬であり、一人娘だったマリモは僅か2歳と18日で息絶えてしまった。それも、最後は短時間だったとはいえ、苦しんで苦しんで死んでしまった。

冷たくなったマリモの体をいつも使っていたベッドに横たえ、お気に入りだったピンク色の毛布を掛けた。先生に処置してもらったマリモは、さっきまでの目を開いたままの死に顔ではなく、まるで眠っているような穏やかな顔になっていた。しかしその穏やかな横顔は冷たく、もう二度と動くことはない。「ママ~!」とベッドから飛び出してくることもない。私は再び泣いた。

 

先天性腎臓形成不全の女の子

マリモは先天性の腎臓形成不全による重度の腎不全を患っていた。

生後3か月で我が家にやってきたマリモは、元気でお転婆な女の子だった。そして私達にたくさんの楽しい時間と深い悲しみを残して、わずか2歳と18日、一緒に暮らし始めてから1年9か月で虹の橋へと行ってしまった。

 今は全ての苦しみから解放されて、きっと虹の橋で元気に遊んでいるであろうマリモ。次は健康な体で生まれておいで。そしてもう一度、ママの所に帰ってきてね。また一緒にマリモが大好きだった公園をお散歩しよう。

 

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

 

 

 

 

 

 

 

5月19日、まりもは虹の橋へ旅立ちました。

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2019年12月、既に重度の尿毒症でした。

こんにちは、Marimoです。

約9か月もブログを放置しておりました。

私が長期間メニエール病で療養し、やっと回復した頃に、マリモは重度の尿毒症になり、その後必死の闘病が続きました。しかし、マリモは半年の闘病後、5月19日の夜に遂に旅立ってしまいました。元々マリモとの日々を綴りつつ、腎不全の症状に関する情報を書き残そうと思って始めたブログですが、これからは数回に分けて、僅か2歳と18日で逝ってしまったマリモの生涯について語りたいと思います。

犬の腎不全は犬の死因の第3位を占める疾病で、老犬にはよくみられる病気です。しかし、マリモのような先天性の腎不全は大変珍しいそうで、あまり若い犬の腎不全に関する情報は無いように思います。

その生涯の大半が、腎不全との戦いだったマリモとの生活は、通院や、それに伴い膨れ上がる医療費など、精神的にも経済的にも不安になることが多く、また途中で罹患したメニエール病が想像以上に治癒に時間が掛かり充分に構ってあげられない時間もありました。

ここには、マリモの腎臓形成不全発覚前に現れていた症状や、発覚後の医療費を含め、出来る限り詳細にマリモとの生活を書き残していきたいと思います。マリモはその短い生涯を小さな体で最後まで精一杯生き抜いてくれました。

その記録を書き残すことで、同じように腎不全の愛犬と闘病生活を送る人に、少しでも有益な情報を残しておきたいと思います。マリモの生涯は本当に短いものでした。たった2年と18日の生涯で、生後9か月目から皮下補液が始まり、200回近くの通院をすることになったマリモ。今はただ、安らかにと願うばかりです。

まりもの看病は精神的にも経済的にも大変な物でした。すべての予定はまりもの通院を中心に回り、自由時間は殆どない日々でしたが、それでもやはり、まりもと暮らした時間はかけがえのない宝物です。次回生まれ変わる時には健康な体に生まれますように。

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしております。

 

 

メニエール病、再び(その2)

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ソファーで主人と寝転ぶまりも



こんにちは、Marimoです

 

暫くブログを休んでしまいました。7月に罹患したメニエール病ですが、これが本当にしつこい。全然治りません。特に私の場合は最初に発作が出たときに早めに点滴を受けたせいか、比較的直ぐに目眩も吐気も治まってきて家の中では比較的自由に動き回れたため、メニエールを甘く見たのがいけなかったのでしょう。1カ月して落ち着いてきた頃に再び連続して目眩と吐き気の発作に襲われましたが、これは最初の時よりも遥かに激しく、また点滴に通っても通っても、なかなか治まってくれませんでした。

 

目眩で階段から落下

そして、それでも少し目眩も治まってきて、少しクラクラすることがあるものの一人で近所を歩くことはできるくらいに回復した頃、点滴に通うためにマンションの入口の階段を下りていた時に激しい目眩に襲われてしまいました。急いでしゃがみ込んだのですが、そのままバランスを崩して下まで落下、たった5段だったのですが激しく目眩がしていると、自分がどんな姿勢で落ちているのかがわからず、受け身の姿勢も取れなかったため、骨折しなかったもののあちこち打ったり捻挫したり結構な怪我になってしまいました。

幸い母が電車で20分ぐらいの所に住んでいるので、首から下げていたスマホで母に電話し、直ぐに来てもらえましたが、通りに面していない出入り口で倒れてしまったので、あのまま高温の日中に怪我と目眩で動けないままだったら大変なことになっていたと思います。

 暫く母が泊まり込んで私とまりもの世話をしてくれたので、何とか生活できましたが、メニエール病は本当に怖いです。医師曰く、お年寄りだとメニエール病による目眩で家の中で転倒して骨折し、そのまま寝たきりになる人も少なくないのだとか。

 

打ち身と捻挫だらけ

私は幸い骨折は無かったのですが、手足首や指の捻挫、打ち身等で整形外科にも通う羽目になりました。たった5段の階段でこの怪我かと泣きたい気分でしたが、医師が言うには、酷い目眩を起こして落下した場合、ほんの数段でも大怪我になることは珍しくなく、お年寄りであれば複雑骨折して即入院&手術になってしまいかねないところだったそうです。

今朝は朝から起き上がって、久しぶりにブログを書いていますが、まだ体があちこち痛んでいます。まりもともちっとも遊んでやれず、本当に淋しい思いをさせてしまいました。

 

生活習慣の見直し

メニエール病は、日頃のストレスや生活習慣を見直すことが重要だということで、私の生活について考えてみました。私は子供時代から寝つきが悪く、それは大人になって鬱やパニック障害を患って以来悪化し、睡眠導入剤を手放せない生活なのですが、夜眠れないわりに朝には強く、昼間眠気に襲われることも無かったので、きっと私は睡眠が少なくても大丈夫なんだと思うようにしてきました。しかし、やはり眠れないのは問題なのかもしれません。

これまで、忙しくなると「まぁ寝ないでやればなんとかなるし」と睡眠時間を削ればいいと考えておりましが、これを機に少し生活習慣を考え直そうと思っています。

 

まりもは・・・ 

まりもは母にお世話してもらって普通に生活していましたし、母にもかなり懐いてきましたが、やはりなんとなく淋しそうです。そして以前にも増してパパっ子になり、毎日主人の帰宅時間が近づくと玄関で帰りを待っています。私が起きているときは私の足元にやってきますが、飛びついてはいけないと分かるのか、足元にちょこんと座ってジ~っと私を見つめています。

 本来、まりもをしっかり点滴に通わせるのが私の役目で、自分が点滴に通っている場合ではありません。主人にも母にも迷惑をかけて申し訳ない限りですが、早く回復するようもう少し休ませてもらおうと思っています。