まりも日和

先天性腎臓形成不全による重度の腎不全のため、2歳と18日で虹の橋へ旅立った愛犬「まりも」について綴った「まりも物語」(腎不全と闘った642日間の記録)と、2020年8月に我が家にやってきたおてんば娘「ぴりか」の成長記録「ぴりか日記」、ハンドメイドについて書いた「Atelier Marimo」、その他夫婦二人生活の日々の出来事や思うことを綴ったブログです。

まりも物語:37、最後の日(1)~犬の腎不全末期・まりもが生きた最後の1日~

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ぼんやりと外を眺めるマリモ

37、最後の日(1)~犬の腎不全末期・まりもが生きた最後の1日~

5月19日は朝から強風の中パラパラと雨が降り、5月にしてはとても寒い日だった。マリモは相変わらず苦しそうにしている。呼吸以外にも私には気になることがあった。昨日も午前中に点滴を受けているのにマリモは全く排尿をしていなかった。

腎不全の末期症状の中でも、尿が出なくなったらもう相当に危険な状態だという。少なくともマリモは、20時間以上は排尿をしていない。そんなことを考えていると、マリモがふいにベッドの上で立ち上がり、ふらつきながらもベッドから出てきてお尻を下げた。

トイレまで歩く力が無いのだろう。マリモはベッドの横でよろけながらもほんの少しウンチをした。ウンチだけでも出ていれば大丈夫だろうか。尿が出ていないのが気になった。

病院へ 

午前9時の診療開始時間が近づいてくると、私は病院に予約の電話を入れた。そして9時ちょうどに病院に行き、医師にマリモの尿が出ていないことを話した。

医師はマリモのお腹を触診し、「触った感じではオシッコは作られているみたいですよ。」と言った。そしてもう一度念入りに触診して「溜まっている感じがしますね。」と言った瞬間、マリモは勢いよくオシッコをした。医師と二人大慌てでペットシートでオシッコを拭いた。

マリモのオシッコは薄いとはいえ黄色い色がついていた。まだ腎臓が機能している証拠だ。私は少し安心した。医師は診察が終わると、再びマリモを高濃度酸素室に入れた。高濃度酸素室の入り口から中を覗くと、少しは呼吸が楽になってきたのだろうか、マリモは少しウトウトしているように見える。

昨晩は一睡もしていない。少しは眠ってくれるといいのだけれど・・・。マリモを高濃度酸素室に入れている間、私は病院の外へ出て何度も酸素ボックスレンタル業者に電話を入れてみたが、留守電になってしまって全然通じない。私は15分おきに電話を入れ、折り返しをくれるよう留守電にメッセージを残した。 

絶対に連れて帰る

どうしても業者に電話が通じない場合、マリモが高濃度酸素室で眠っていてくれるのであれば、このまま入院させてもいいと思い、とりあえず一回家に戻ろうとして高濃度酸素室の中を覗いた。

するとそれまで伏せて眠っているように見えたマリモが必死に上体を持ち上げて、「行かないで」と言うように私を見ている。たとえ息苦しくてもこの子は家に帰りたいのだ。

絶対に連れて帰ろう。絶対に絶対に連れて帰る。酸素ボックスは何があっても絶対に今日中に調達する。「ママが絶対にマリモの大好きなお家へ連れて帰るからね!」必死に私を見るマリモに誓い、私は電話の通じない業者以外に、今日中に酸素ボックスを連絡してくれる業者が無いか、スマホで検索を始めた。

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外を眺めるマリモ

 酸素ボックスレンタル

そして11時を過ぎたとき、留守電を残していた業者から折り返しの電話が入った。電話口で担当者は、通常は9時から17時までが営業時間だが、コロナ禍の現在は営業時間を大幅に短縮しており、午前11時から午後15時までしか開いていないと説明した。

また、通常は業者の方で設置する家まで機材一式を運び、場合によっては設置まで行うそうだけれど、今日中の設置となると既に配送が間に合わず、どうしても今日と言うのであれば、私が業者の倉庫まで取りに行って持ち帰り自分で設置するしかないとのことだった。

選択の余地はない。私は即断で自分で取りに行くことにした。その場合、営業時間は15時までだが事務手続きや取扱いの説明等もあるため、少なくとも14時までには現地についていないと間に合わないという。私は必ず14時迄に行くと言って、借りたい酸素ボックスのサイズを伝えると電話を切った。マリモは高濃度酸素室の中で伏せている。そして立ち去ろうとするとまた上半身を微かに持ち上げた。

マリモを置いて、業者の倉庫へ

「待っててね。ママ直ぐにお迎えに来るからね。必ず連れて帰るからね。」酸素室のドア越しにマリモに話しかけると、私は酸素ボックスを取りに行く旨を病院の受付の女性に告げて、一度家に戻った。

家で待っていた夫に酸素ボックスを借りに倉庫まで行くと話すと、夫は驚いて私に少し落ち着くように言った。夫は明日の朝までマリモを入院させて、明日の午前中に業者に酸素ボックスを設置してもらう方がいいのではと言う。

しかし、私はどうしてもマリモを今夜病院に預ける気にはなれなかった。理屈ではない。直感的に絶対に連れて帰らなければならないと感じていた。

夫は絶対に連れて帰るという私の強い意志に折れ、私がどうしても行くというのであれば、もう止めないし酸素ボックスは組み立ててくれるという。確かに私が組み立てるよりエンジニアの夫が組み立てたほうが早いし安全だろう。

私は着替えると家を飛び出して業者の倉庫へと向かった。既に12時近い。1時間程度でつくとは思うけれど、道に迷ったりしたらギリギリになるかもしれない。

時計と睨めっこをしながら倉庫の最寄り駅まで着くと、地図で大体の場所を確認し歩き始めた。雨脚は決して強くないものの、強風のため横殴りの雨となっている。傘をさしていても全身が濡れてくるし、傘も骨が折れそうだ。でもたとえ傘の骨が折れようと、全身ずぶぬれになろうと、絶対に酸素ボックスを持って帰らなければ。私は雨の中を速足で歩いた。マリモ、待っててね!

※まりもの名前は本来ひらがな表記ですが、文中では読みやすいようにカタカナにしてあります。

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