まりも日和

先天性腎臓形成不全による重度の腎不全のため、2歳と18日で虹の橋へ旅立った愛犬「まりも」について綴った「まりも物語」(腎不全と闘った642日間の記録)と、2020年8月に我が家にやってきたおてんば娘「ぴりか」の成長記録「ぴりか日記」、ハンドメイドについて書いた「Atelier Marimo」、その他夫婦二人生活の日々の出来事や思うことを綴ったブログです。

ペットロスを超えて:6、マリモのために

f:id:Marimotan:20200926162626j:plain

夫と遊ぶピリカ。生後2か月半ごろ。

6、マリモのために

ピリカをお迎えして1ヶ月以上が過ぎても、私は手放しでピリカを可愛がることに罪悪感を覚えていた。ピリカとの生活の中でマリモと過ごした記憶が遠のいてしまうと、マリモだけを過去に置き去りにして前に進んでしまう気がして、積極的にピリカに関わることができない。

それでもピリカはスクスクと育ち、元気いっぱいに家の中を走り回って私にも纏わりついてくる。この子はマリモよりはるかに気が強く、要求吠えも噛み癖も激しい。今しっかりと向き合って躾けなければ、きっと後々苦労するだろうしピリカにとっても良くない。それは解っていても気持ちがついていかない。

2回目のワクチン注射

そうこうしているうちに、ピリカを2回目のワクチン注射に連れて行く日が来た。1回目はブリーダーさんの所にいる時に接種している。ピリカは夫がメインになってお世話をしてるとはいえ、夫はあまり動物病院には行きたがらないのて、いつも通り私が連れて行くことにした。

受付を済ませて待っていると、動物看護士さんが話しかけてきた。彼女は「ピリカちゃんが来て、大好きなママに笑顔が戻ってきっとマリモちゃんも安心したと思いますよ。」と言ってピリカの頭を撫でた。マリモはいつも点滴中、医師の話を聞いては場所も憚らず泣いてばかりいる私を心配そうに見ていたらしい。

家でもマリモはいつも、私が泣いていたり寝込んでいるとずっと黙って傍に寄り添っていてくれた。私が泣いてばかりいたらマリモが安心して虹の橋で遊べない。私はマリモの為にも元の生活に戻らなくてはと思い始めた。

f:id:Marimotan:20200926162542j:plain

元気いっぱいのピリカ

マリモの思い出と共に

ピリカの無駄吠えは、トレーナーさんの指導のもとに色々対策を立てているのにあまり改善されず、在宅勤務の夫はその甲高くいつまでも続く鳴き声に集中力を乱され、苛立ちを強めていた。

我が家は広めのリビングと寝室しかなく、夫の仕事用机はリビングの一角にあり、ピリカのケージもリビングに置かれている。この至近距離でワンワンと仔犬の甲高い声で鳴き続けられたら神経が参ってしまうのはよく解る。マリモも無駄吠えはしたけれど、少しケージに入れて無視していれば大人しくなった。しかしピリカは要求が通るまで諦めることなく鳴き続け、暴れまくる。これではとても集中できない。

夫は渋る私を押し切ってピリカを迎えた手前、頑張ってお世話をしているけれど、毎日無駄吠えを聞かされ続けるストレスは甚大で、もう限界に近そうだ。

もう、ここらで私がもっと積極的に関わり、徹底して無駄吠えを封じ込めるときなのかも知れない。ただでさえ言うことを聞かないピリカとは、仔犬のうちにしっかり信頼関係を築かないと後々大変なことになるだろう。この無駄吠えを何とかしないと何処にも旅行に連れて行かれなくなってしまう。

この子をしっかり躾けて、マリモの分も可愛がってあげることもマリモの供養にもつながるのかもしれない。ピリカを見ているとマリモを思い出して涙が込み上げてくるときも多々あるけれど、そうしてマリモを思い出している限りはマリモとの日々は遠い記憶にはならない。マリモの思い出とともにピリカと歩んでいく道もあるはず。

とはいえ、いきなり変わるのは難しい。私はまずは少しづつピリカと触れ合って、夫に偏向しているピリカのお世話を私の方に振り分けていくことから始めていくことにした。

 1ヶ月が過ぎて

そして今、ピリカと少しずつ触れ合う時間を増やして1ヶ月が過ぎ、私は以前よりだいぶ楽にピリカと遊べるようになってきている。

ピリカの姿がマリモと重なって涙が込み上げることはあるけれど、そんな時は堪えずに泣いてしまうことにした。

可愛かったマリモの姿、重さ、仕草、全ては自然に記憶が薄れていくまで噛み締めていこう。そして今、生後3ヶ月半に差し掛かり、ヤンチャになって可愛い盛りのピリカとの暮らしも楽しんで行こう。ピリカの仔犬時代は今しかないのだから。

私が元気になる方がマリモも安心して虹の橋で遊び回れるのだと思えば、頑張れる気がする。

 

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

 

ペットロスを超えて:5、罪悪感

f:id:Marimotan:20200923212419j:plain

夫と遊ぶピリカ

5、ピリカとマリモへの罪悪感

ピリカはマリモに比べて好奇心旺盛で、知らない場所でも全く物おじしない。家での行動範囲はマリモより遥かに広く、ケージから出すといつまででも家の中を探検して歩いた。しかもとても気が強く、まだ遊びたいのにケージに入れてしまうと物凄く怒って吠え、遊んでいる最中には私や夫の指を噛む。

とにかく言うことを聞かず、随所に気の強さが表れているピリカを見るうちに、私はこの子は小さいうちにしっかり躾ておかないと、大変なことになりそうだと感じるようになった。

そこで私は、早速マリモもお世話しなったトレーナーさんに連絡を入れ、ピリカを見に来てもらうことにした。やはりトレーナーさんから見ても、ピリカは月齢の割に自己主張が強く頑固なので、早めにしっかり躾けた方がいいという。私はその場でトレーニングを始めることに決めた。

こうしてピリカは生後2か月にしてトレーニングを受けることになった。トレーナーさんから見てもこの子は気が強い。しかも無駄吠えが酷く、うるさくて窓も開けられない。どうにかしなければと頭が痛い日々が続いたけれど、そんな私達の悩みを尻目にピリカは日々スクスクと育ち、日々お転婆ぶりを増していた。f:id:Marimotan:20200923212456j:plain

お腹を出して眠るピリカ

成長するピリカがマリモと重なる

順調に成長しているピリカは、だんだんと我が家にやってきた頃のマリモに似てきた。同じ犬種なのだから当たり前の話だし、ピリカの成長ぶりを見るのは嬉しいことでもあったけれど、その嬉しいはずの成長が私にとっては思わぬ問題となった。

ピリカは、在宅勤務の夫の愛情を一身に受けて元気に成長していた。これからきっと楽しいことがいっぱいあるだろう。本来微笑ましいはずのその姿は、我が家にやってきたばかりの頃、まだ腎不全など考えもしなかった頃のスクスクと成長していたマリモを彷彿とさせた。

マリモだって幸せに暮らすために生まれてきた。あんな闘病ばかりの日々を過ごすために生まれたわけでは無かったはず。目の前で楽しそうに夫と遊んでいるピリカを見ていると、生前に夫と遊んでいたマリモの姿を思い出し、涙が込み上げてきた。ピリカだってご縁があって我が家にやってきた可愛い子で、この家で元気いっぱいに成長しているというのに、私はその可愛い姿を見ながら涙を堪えるのに必死だった。

ピリカが元気に成長していることは素直に喜ばしい。しかしその反面、私には苦しい闘病ばかりの生活を送り、僅か2歳で絶命したマリモがただただ哀れでならなかった。私までピリカを可愛がって楽しく暮らしてしまうことは、マリモだけを過去の思い出の中に置き去りにするように思えて、私はピリカを可愛がることに罪悪感を覚えるようになっていた。

ピリカはマリモの代わりではない。ピリカはピリカで大切な我が家の子。ピリカは私にもすっかり懐き、仕事から帰れば玄関先まで走ってお迎えに来てくれる。しかしそんな姿でさえ、まだ元気だった頃に私が帰宅すると一目散に走って出迎えてくれたマリモを思い出させ、涙が込み上げてくるばかりだった。

罪悪感

夫はそんな私の様子を見かねて「泣いてもマリモは帰ってこない。マリモだってママが毎日泣いているのなんて見たら悲しむよ。」「ピリカを可愛がってあげるほうがマリモだって喜ぶと思う。」と折に触れ忠告してくれた。夫の言うことは至極真っ当で、私もそれは理解していた。でもどうしてもどうしても気持ちが付いていかない。私はピリカとの距離がうまく取れず、頭の中でピリカとマリモを結びつけては泣いてばかりいた。

勿論私はピリカのことも可愛いと思っている。でも、赤ちゃんだった頃の愛らしかったマリモの姿がピリカと重なり、マリモのことが余計に頭から離れなくなっていた。

これはマリモにとってもピリカにとっても良くない。ピリカはそんな私の思いには関係なく、無邪気に私に纏わりついてくる。ピリカを可愛がることに対するマリモへの罪悪感と、何の罪もないピリカを素直に愛してやれないことに対するピリカへの罪悪感で、私はうまくピリカに接することができなかった。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

 

ペットロスを超えて:4、久々の病院

f:id:Marimotan:20200923212355j:plain

我が家に慣れてきたピリカ

4、久々の病院

一晩夜鳴きをしたピリカは朝になっても元気で、あっと言う間に朝ごはんの時間がきた。しかし、朝食を与えてみるとやはり殆ど食べない。こんな小さな子が食べなければあっという間に低血糖になってしまいそうだ。しかもピリカの運動量はマリモの比ではない。私はお店が開く時間になると、仔犬用ミルクと離乳食にも使える仔犬用のウエットフード、その他幼犬用のおやつ類、マリモもよく食べていたサツマイモやバナナを買いに、スーパーとペット用品ショップに走った。

幸いピリカは犬用ミルクが気に入ったようで、粉ミルクをぬるま湯で溶いてあげると喜んで飲んだ。しかし相変わらずあまり食欲旺盛ではない。マリモのこともあってかなり神経質になっていた私は不安でたまらず、ピリカをお迎えして3日目にマリモを通わせていた動物病院にピリカを連れて行った。

病院ではマリモがいつもお世話になっていた動物看護士の女性が受付に座っており、私がピリカを連れて中に入ると嬉しそうな顔をして「お久しぶりです!」と弾むような明るい声を掛けてくれた。そして他の看護師さんも手の空いている数人がピリカを見に来て、「お元気でしたか?」「新しい子をお迎えしたんですね!」と口々に声をかけ、小さなピリカを撫でに来てくれた。

こうして皆さんで声を掛けてくれたことは素直に嬉しく、私が最後までマリモの看病を頑張れたのも、この人達の優しさと思いやりのおかげだったのだと改めて感謝の気持ちでいっぱいになる。

久しぶりにお会いした院長先生も、相変わらずの穏やかな笑顔で迎えてくれ、ピリカが食事を食べないことを相談すると、離乳期の仔犬でも食べられる回復期用のウエットフードを取り出してきて、ピリカに食べさせてみてくれた。

当初ピリカはあまりフードに興味が無く、先生にじゃれようとしたものの、おもむろにフードを食べだし、結局出された分をきれいに完食した。医師は、ピリカは元気がいいし、まだ家に来たばかりなので単に環境に慣れてないだけだろうから何も心配することは無ないと言って私を落ち着かせてくれた。

f:id:Marimotan:20200923212335j:plain

元気いっぱいのピリカ

 モリモリ食べ始めたピリカ

そして家に帰ってきたピリカは何故が急にモリモリご飯を食べ始めた。今朝からこの調子で食べてくれていたら病院に連れて行く必要は無かったのにと思ったけれど、とにかく食べるようになってくれたので私はホッと胸を撫で下ろした。小さな小さなピリカは、まだあまり固形食に慣れていないのか、ふやかしたフードを口からポロポロこぼしながら少しずつゆっくりと完食した。また、フードは食べるようになったとはいえ、犬用ミルクもしばらくは併用して様子を見ることにした。

 ピリカはその小さな体に底抜けのスタミナと好奇心を持ち、強くたくましく新しい環境に溶け込んでいこうとしていた。当初はあまりの小ささに無事に育ってくれるか心配だったけれど、日々のお転婆ぶりを見ている限り、この子に関してはあまり心配なさそうだ。むしろ私が必要以上に心配しすぎないようにしなければ。

マリモの時にも飼い主が神経質になりすぎると犬も不安になると散々注意されてきた。この子には強く元気に大らかに育ってほしい。私も必要以上に神経をとがらせるのは止めなければと思った。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

ペットロスを超えて:3、ピリカとの出会い

f:id:Marimotan:20200923211039j:plain

ピリカとご対面!

3、ピリカとの出会い

夫から新しい子を迎えてはと提案されてから少し経った頃、夫が家から日帰りで行かれる範囲に犬舎のあるブリーダーさんの仔犬を見つけてきた。正直あまり気が進まないまま、夫に「とりあえず見るだけでも」と促されて渋々出かけていくと、そこには生後45日を迎えたヨーキーの赤ちゃんが2匹、お母さん犬と一緒にケージに入っていた。赤ちゃんは男の子と女の子が1匹ずつ、2匹とも元気いっぱいでケージから出されるとヨチヨチと歩き始めた。

私は2匹のうち女の子の方を抱き上げてみた。見るからにヤンチャそうなその子は、いきなり知らない人間に抱き上げられて驚いたのか、妙に神妙にしている。マリモとの初対面はまりもが生後3か月を過ぎたころだったから、今のこの子はマリモよりかなり小さく頼りない。

マリモが亡くなってからは、お散歩中の犬を見るだけでも辛かったというのに、何故かこの子たちを見ても辛さは感じなかった。むしろ赤ちゃんヨーキー達の姿を見ていると、ずっと風穴があいたようだった胸が、じんわりと暖まっていくようだった。

f:id:Marimotan:20200923201314j:plain

リビングを走り回り、疲れて眠るピリカ

ピリカをお迎えする

私が仔犬と戯れている間も夫はブリーダーさんと話し込んでいた。前回のマリモの事があり、費用は支払うので仔犬をお迎えする前に血液検査を含む健康診断をしっかり受けさせてほしいこと、そしてその結果を待ってからお迎えするか否かを決めたいことなどを話すと、ブリーダーさんは快く事前の検診に同意してくれた。

そしてあっという間に夫とブリーダーさんの商談はまとまり、私達は女の子の方を購入予定として、血液検査を含む健康診断結果を待ってから正式に購入を決めることにになった。

それから1週間後、ブリーダーさんから検診結果の連絡がありヨーキーの女の子は我が家の子になると決定した。名前は「ピリカ」アイヌ語で「可愛い」とか「美しい」という意味があるそうだ。夫は仔犬を迎えたいと思った時からこの名前にすると決めていた。こうして生後55日目にピリカは我が家の子となった。

その週末、私と夫はピリカをお迎えに行った。ピリカは小さな体でキャリーバッグの端っこの方で丸くなり、不安そうな顔でキュンキュン鳴いている。私達はとにかく暑さを避けながら電車を乗り継いで家に帰り、ピリカをキャリーバッグから出した。

ピリカの体重は約1kg、マリモが我が家にやってきた時は1.7kgぐらいだったから、約半分より少し大きいくらいだ。改めて見ると本当に小さい。仔犬と言うより大きめのネズミのような大きさだ。警戒心が強かったマリモと違い、ピリカは怖いもの知らずで何にでも興味を持つ性格らしく、初日から所狭しと家の中を探検して回った。

しかし、ものすごく元気が良いものの、ピリカはあまりご飯を食べなかった。悪い予感がして嫌な記憶がよみがえってくる。私は急いでブリーダーさんに連絡し、犬舎でのピリカの食事について細かく質問した。

ブリーダーさんの話によるとピリカはまだ母犬のお乳も飲んでいたため、ドッグフードはあまりガツガツとは食べていなかったようだ。量も置きっぱなしになっているエサ入れから食べていたそうで正確には解らない。私は急に不安になった。

そして夜、ピリカは真夜中の1時を回った頃から夜鳴きを始めた。そのうち疲れて鳴き止むかと思いきや、その後も数時間、途中休みながら鳴き続けて眠る様子が無い。昨日まで母犬と兄妹犬と一緒に眠っていた子が、いきなり知らない場所に連れてこられてしまって心細かったのだろう。私が起きていくとやっと鳴き止んでくれたので、私はピリカをケージから出し膝の上に乗せた。

マリモであれば私の膝に乗ればそのまま二度寝してくれるので、私もソファーに横になり一緒にウトウトするところなのだけれど、ピリカはそうはいかなかった。殆ど眠っていないというのに元気いっぱいで私の膝の上にじっとすることが無い。下に降ろせば元気にリビングの探索を始めるので片時も目が離せない。

ピリカは初日からリビングの床を勢いよく走っては派手に転んでいた。まだまだ骨だってしっかりしていないだろう体では、これは危険すぎる。私は大急ぎでネットでペット用のタイルマットを通販で注文した。しかもピリカは走りまわるだけでなく、目を離すと台所でもトイレでも寝室のベッドの下でも何処でもすばしっこく入り込んでしまう。

マリモも体格がよく、ヨークシャーテリアにしては強靭な足腰に支えられた身体能力で、元気だった頃はかなりのおてんば娘だったが、ピリカも負けてはいない。赤ちゃんだというのにすばしっこい機敏な動きと怖いもの知らずな性格で、ケージから出しておくと、いつまででも暴れまわる。私は初日からクタクタになってしまった。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村

 

ペットロス:2、夫からの提案

f:id:Marimotan:20200923205644j:plain

お気に入りのソファーの上で。眠そうなマリモ

2、夫からの提案

毎朝私はマリモの骨壷の前にお水とヨーグルトを供え、手を合わせてマリモに謝罪していた。骨壷の後ろには元気だった頃のマリモがクリクリの目でこちらを見ている。もう一度初めからマリモとの生活をやり直したいけれど、この子はもう戻っては来ない。マリモが居なくなって、我が家は火が消えたような寂しさに包まれるようになり、緊急事態宣言が解除されても、私達は殆ど外出しなかった。

マリモと暮らした642日間は本当にあっという間に過ぎてしまった。マリモは腎不全末期の苦しみから解放されて、今は自由に走り回っているだろうか。人見知りで私と夫にべったりだった子だ。寂しがっていないだろうか・・・。

マリモが居なくなってしまって、今更ながらその存在の大きさを思い知った。たとえ重篤な病気を抱えていても、ほぼ寝たきりの状態になってしまっていても、マリモは大切な私達の一人娘であることに変わりはなく、生きているだけで温かい光のような存在だったのだ。

思い出されるのは最後の姿ばかり

あっという間に過ぎたマリモとの日々には、もちろん楽しいことや嬉しいこともたくさんあった。夫と二人、初めてお迎えした仔犬ちゃんのお世話に悪戦苦闘しながらも、スクスクと成長していく姿を眺めることはこの上ない幸せな時間だったし、腎不全が発覚してからも、昨年11月に急激な悪化を迎えるまでは、近場のみとはいえ一緒にお出かけしたり、家で楽しく遊んだりしていたのだ。しかし、今思い出されるのは最後に「ママ、ママ」と必死に縋りつこうとした姿ばかりだった。

マリモ用にペット仏壇を買ったものの、その小さな骨壺を仏壇にしまうことができず、マリモの骨壺はいつまでもリビングのケージの上に置いたままになっていた。本来は49日で骨壺を仏壇に入れるつもりが、どうしてもそんな気分にはならない。骨壺の後ろにある写真の中のマリモと目が合うたびに涙が溢れた。

f:id:Marimotan:20200923195340j:plain

夫がソファーに横になると、マリモはいつも上に乗っていた

初盆

そうこうしているうちにマリモの初盆がやってきた。このあたりで骨壺を仏壇に入れてあげなくてはと思い、やっとの思いで骨壺をペット用仏壇にしまうと、小さなお供えと花を仏壇の周りに飾った。そしてお盆が終わり3回目の月命日の日に、夫から「もう気持ちを切り替えて、次の子を迎えよう。」と提案された。

夫は「マリモのことは今もすごく可愛いし、我が家の大切な子であることには変わりはないけれど、もう悲しんでいてもあの子は帰ってこない。新しい子を迎えて前をむこう。」と語りかけてきた。

夫の気持ちは私にも理解できる。しかし、私は直ぐには夫の意見に賛同できなかった。マリモが亡くなってからまだ3か月しかたっておらず、骨壺もやっと仏壇に収めたばかりだ。私はまだまだ次の子をお迎えする気分ではないし、そんなに早く次を迎えたらマリモが可哀想なのでは・・・。

勿論、仔犬が来たらまた家の中が明るくなるだろう。でも闘病ばかりで僅か2歳で亡くなったマリモを思う時、新しい子を迎えてしまうとマリモを1人で過去に置き去りにするような罪悪感が湧いてくる。

マリモにとって私達は生涯唯一の家族だった。その家族が僅か死後3か月で新しい子を迎えてしまったと知ったら、マリモは淋しがるのではないだろうか。もっともっと時間を掛けて死を悼み、弔ってあげたい。しかし、私の気持ちを聞いても、夫の新しい子を迎えたい思いは抑えきれなかったようで、その後も私に隠れてヨークシャーテリアのブリーダーと仔犬を探していた。

ブログランキング・にほんブログ村へにほんブログ村